『あの日の気持ちの名前』
夜中の歌番組に峯田くんの歌が流れてきた。
不純物を取り除いて、甘く柔らかい綿あめみたいに繊細な部分と、
荒々しく打ちつけるようなかき鳴らした嵐みたいな部分が合わさって絡み合って溶け合ったような音楽を作るから毎回いつもすごく胸にくる。
素直さ、素朴さ、汗臭さ、泥臭さ、儚さ、ノスタルジー、疾走感がこの人の持ち味で聞き手側の胸に刻むのがうまい人だ、すごくすごく。
新曲として披露された一曲に鷲掴みにされたような感覚になった。
とりわけ一節の
『こんなにも愛してる』
って歌詞で全ての感情を持っていかれた。
最近愛してるってどんな感情なのか少しわからないなって思ったことがあって、
彼から言われたあの日に私は照れずに返せていただろうかとか、私が返した言葉は彼のその気持ちに対等なのだろうかとか、
この感情は言葉にするとどれに当てはまるんだろう?とか。
そもそもどこからどこまでが好きって感情で、どこからどこまでが愛してるって感情なのかとか。
彼に会う度、彼のことを考える度、頭の片隅にチラついていてそれでもモヤがかかったように不透明のままだったんだと思う。
なのに、そのモヤがその一曲の歌で晴れた。
その歌は亡くなった友達に作った曲と紹介されていたけどどう聴いても男女の関係の2人の歌で胸が苦しくなって泣いてしまった。
歌詞の中の相手役として彼が出てきた。
頬っぺたをすり寄せて添い寝だけで微睡んでただけなのにあんなにも満ち足りた時間を過ごしたあの日の彼が出てきた。
あの空気感とか感覚とか彼の顔とか声とか匂いとか全てが思い出されてそれからあの時感じてた感覚こそそれだと思った。
そう気付いたら、涙が出た。
止まらなくなった。
そうだ、
私も
もう好きなんかじゃなかったんだ。
『愛してる』んだ。
こんなにも。